大腸がんを早期に発見し、治療を行うための便潜血検査

ライフスタイル・食生活の欧米化という環境要因の変化の影響により、近年、日本国内における大腸がん患者が増えています。厚生労働省の報告では、大腸がんで年間約4万人の方が亡くなっており、部位別のがんで見てみると肺がん、胃がんに次いで第3位の死因となっています。特に女性においては第1位、男性でも第4位となっています。

このような背景から大腸がんを早期に発見することは重要な課題となっています。大腸がんを早期に発見し、治療を行うためのスクリーニング(ふるいわけ)検査として有用なのが便潜血検査です。

検査は2日分の便を採取し血液が混じっているかどうかを判断する手軽なものとなっています。潜血反応が陽性の場合、大腸がんの精密検査に進むことになります。この検査の有用性は何らかの腹部症状を訴えて大腸精密検査を行った有症状の方に比して早期癌の発見率が高く、お腹にメスを入れる外科手術を必要としない内視鏡を用いた治療手段により治療集結する確率が高いことがあげられます。

便潜血陽性の結果となった場合、大腸の精密検査が必要となります。検査としては大きく肛門からバリウムを入れる検査(大腸レントゲン検査)と肛門から内視鏡を挿入する検査があります。

両者の違いは大腸レントゲン検査がバリウム(白く写る)と空気(黒く写る)のコントラストの差を利用して消化管内部の凹凸を観察するのに比し、内視鏡検査は大腸の粘膜表面を直接観察し、疑わしき病変があれば組織検査を同時に行うことが可能である点です。

内視鏡機器の小型化、低価格化が進み多くの医療機関に普及している現在は、最初から精密検査として内視鏡を使用する施設が増えてきています。それは検査と同時に組織検査を行うことにより確実な診断が行えることと、早期大腸癌の凹凸の明かでない時期で色調変化のみの状態の診断も可能となってきていることによるものと思えます。

しかし、内視鏡検査を行うにおいては便のない状態の大腸にするため、検査前日から検査食や下剤の服用、検査当日に多量の腸管洗浄液の服用、スコープが小型化したとはいえ、飲み込む際の不快感などが理由で検査を躊躇してしまう患者さんも少なくありません。検査施設では少しでも苦痛を緩和するため内服薬や注射を用いてより安全で苦痛の少ない内視鏡検査に取り組んでいます。

増加する大腸がんの死亡率を低下させるため便秘や下痢を繰り返す、タール状の便が出る、排便後にトイレットペーパーに血がついているなどの症状が気になる方はもちろん、症状のない方でも定期的に便潜血検査を受けて、早い段階での検査・治療を心掛けるようにしましょう。