食生活の乱れやストレス等に加え精神的な要因が大きい過敏性腸症候群

お腹がいつもゴロゴロ鳴っている、便秘と下痢を交互に繰り返す、突然の下痢や排便すると軽快する腹痛、睡眠中は何もないのに朝、出勤前になると急に便意がやってくる…。このような症状が3ヶ月以上続いてる場合、過敏性腸症候群(IBS:Irritable Bowel Syndromeの略)の疑いがあります。

IBSは、腸の過剰な蠕動運動や弛緩によって便通異常や腹痛などの症状が生じる機能的腸疾患の症候群で日本人の12〜15%が罹っているとされています。診断には、年齢、血便や体重減少等の症状(アラームサイン)に十分配慮し、内視鏡検査等で感染症やがん、炎症性腸疾患等の器質的疾患を除外する必要があります。

IBSの診断は慎重を要しますが、消化器科に務める医師にとっては、日常診療では最も診察するする機会の多い疾患の一つです。腸の過剰な蠕動運動等が発生する原因は多岐にわたり、食生活の乱れやストレス等に加え精神的な要因(不安、緊張、抑うつ等)による自律神経失調が大きく関与するとされています。

腸は心を写す鏡などと呼ばれる胃腸は、以前には「神経性胃腸炎」等の病名が存在したほど、無意識のうちに心の状態によって大きく調子が変わる臓器です。ストレスの多い現代ではIBSに困っている方は思いのほか多く、前触れがなく腹具合が悪くなるため、電車での通勤が怖い、車の運転が不安など、QOLが著しく低下して困っている方も大勢います。

治療には、まず暴飲暴食等を控え生活習慣を改善し不要なストレスを軽減することが大切です。お薬による症状の緩和には乳酸菌等の整腸剤、腸の過蠕動を押さえる抗コリン剤等の従来の薬剤に加え、高分子樹脂(便性状を改善)や腸内セロトニン拮抗剤が処方されます。